本コラムでは、DeFi(分散型金融)をはじめとしたトークンのエアドロップについて取り上げます。2020年から、主にイーサリアム(Ethereum)上のDeFiプロトコルをはじめとしたプロジェクトによる暗号資産(トークン)のエアドロップが頻繁に行われています。
プロジェクト側のエアドロップの狙い
プロジェクトはトークン発行を発表する以前からプロダクトを利用している初期ユーザーにトークンを配布したり、これからプロダクトに興味を持つユーザーを予測してトークンを配布するということを積極的に行うようになりました。プロトコルの方向性決定に関する議決権となるガバナンストークンをユーザーコミュニティに広く配布して、プロトコルを分散化させるという動機からこのようなエアドロップが行われています。
最近では無料のエアドロップで貰ったトークンが後に値上がりし、結果的に数百万円や数千万円以上になったという声を聞くことも珍しくありません。日本のTwitterコミュニティではこれを「給付金」と表現する現象も観測されました。
本レポートでは、このようなプロトコルによる独自トークンのエアドロップ配布の現状や背景について紹介します。
プロトコルはなぜ独自トークンのエアドロップをするのか
2020年から、プロトコルによる独自トークンのエアドロップが積極的に行われるトレンドが続いています。このトレンドのきっかけはイーサリアム上最大のDeFiプロトコルであるユニスワップ(Uniswap)による独自トークンUNIの配布です。
Uniswapの初期ユーザーには400UNIが配布されており、執筆時点でのUNIの価格30ドルで計算すると、約1万2,000ドル(約127万円)に相当します。加えて、過去に流動性提供した量に応じてさらに多く配布される仕組みになっており、最も多く貰ったユーザーは210万UNIで約6,500万ドルに相当しています。
Uniswapのケースでは多くのユーザーは無料で100万円以上のトークンを配布されて、1,000万円相当以上のトークンを得たユーザーも少なくありません。こういった現状から「DeFi給付金」というワードが生まれ、この取得を狙うユーザーも増加しました。
プロトコル側がトークンをエアドロップする動機は主に「初期のユーザーへの還元」「ユーザーとプロトコルの間での互恵関係」「マーケティング」の3つです。順番に解説します。
初期のユーザーへの還元
第一のケースが初期のユーザーへの還元です。これは上述したUNIの例も相当します。
Uniswapのプロトコルが公開されたのは2018年ですが、その後トークンを発行したのは2020年です。
この2年間にプロダクトを利用した過去のユーザーに対しても、Uniswapは初期のトークンを付与しています。この初期ユーザーの配布に対してUniswapは「Uniswapの成功は初期のユーザーが存在してこそでした。この初期のコミュニティメンバーがプロダクトの権利の一部を受け取るのは自然なことです。」とブログで述べています。Uniswapのように過去のユーザーに対してさかのぼるケースは他のプロトコルでも増えています。
ユーザーとプロトコルの間での互恵関係
他の動機はユーザーとプロトコルの間での互恵関係によるものです。典型的なモデルでは流動性マイニング(イールドファーミング)です。プロトコルは新しくローンチをした初期段階から取引流動性を引きつけるために、マーケットメイキングしてくれたユーザーに対して報酬を出します。
ユーザーとプロトコルの間での互恵関係で他のモデルでは、テストネットでアルファ版のプロダクトを試したり、フィードバックをしたユーザーに対してトークンを配布するというケースが多いです。
マーケティング
次にマーケティングです。例えば、ビットコインのDeFi(分散型金融)上での資産運用を促進するBadger DAOはプロジェクト開始時にトークンをエアドロップによって配布しました。
このエアドロップはイーサリアムのDeFiで特定の行動・利用したアカウント向けに配布する形式を取りました。例えばSushiSwapや特定のプロジェクトのガバナンスに参加したアカウント、またBadger DAOはビットコイン関連のDeFiなので類似ユーザーに接触するようにWBTCやRENBTCを生成したことがあるユーザーに配布しています。
まとめ
以上のようにさまざまなプロジェクトがトークンを分配する昨今です。冒頭で述べたようにエアドロップで配られたトークンが後に値上がりして、結果的に大きな利益を得ているユーザーも存在します。気になった方はエアドロップ狙いでさまざまなプロジェクトを調べてみるのも良いのではないのでしょうか。