イーサリアム(Ethereum)のロンドンハードフォークで何が起きるの?

いよいよイーサリアム(Ethereum)のハードフォークが、日本時間8月5日夜に予定されています。このハードフォークはイーサリアムをアップグレードさせるためのもので、チェーンを分裂させるためのものではありません。一般ユーザーの方は特に何も特別なことをする必要はありませんが、ロンドンハードフォークはイーサリアム利用者にとっても重要な変化が起きる重要なイベントです。

ロンドン・ハードフォーク

このハードフォークにはイギリスの都市ロンドンの名前がつけられており、2021年に予定されているイーサリアムの2回目のアップグレードです。2021年8月5日に採掘される予定のブロック番号12965000でイーサリアムのメインネットに展開されます。(カウントダウンはこちらから)

今回は2021年4月14日にあった前回のベルリンアップグレードよりもさらにユーザーへの影響が大きいものになります。ロンドンのハードフォークに含まれる予定のEIP(イーサリアム改善提案)は5つあり、その中でもイーサリアムに大きな影響を与える2つのEIPがあり、これらについて詳しく解説します。

EIP-3529:ストレージリファンドの減額

EIP-3529
イーサリアムには、不要になったブロックチェーン上のストレージやコントラクトを積極的に整頓するようアプリケーションにインセンティブを与えるためガス代の払い戻し(リファンド)が行われる仕組みがあります。

アイデア自体は素晴らしいのですが、現実で何が起きたかというと、この仕組みを利用してガス価格が低いときにダミーのデータを意図的に保存し、ガス料金が高くなると、保管していたダミーのデータを破棄し、返金されたガス代を使って取引コストを下げることに使われていました。(詳しくはGasTokenについて調べてみてください)

DeFi(分散型金融)の波に乗ってガス価格がかつてないほど高騰しましたが、MEV(Miner Extractable Value:マイナーがブロックを生成する際にトランザクションをあえて含めたり除外したり、順番を変えたりすることで得られる利益)の為にこの仕組みを利用して、運用コストを下げるために使用されており、それ以外ではステートの肥大化とガス代を底上げしてしまっただけで、それ以上の役割りを果たせていませんでした。

今回のEIPでは、払い戻しの仕組みの一部が削除され一部減額されます。これによってアプリケーションがストレージの整理を促すには十分なインセンティブを残しながらも、この仕組みを搾取するほどうま味があるわけではないに程度にバランスがとられます。

EIP-1559: 手数料の仕組み変更

EIP-1559
今回のハードフォークでは、取引手数料の機能の変更が最大のアップグレードだと言えます。

現在のイーサリアムの送金手数料では、オークション・メカニズムが使用されており、ユーザーはガス価格を指定してトランザクションを送信します。マイナーは、メモリープールから次のブロックに含める取引を選択します。このとき、マイナーには、高いガス価格が指定されている取引を優先して含めるインセンティブがあります。

しかし、ここでの問題はユーザーが最適なガス価格を決定するために、それまでのブロックやメモリープールに置かれているトランザクションの数に基づいて予測する必要があることです。特にボラティリティの高い時期にはこれが非常に困難になり、ユーザーからマイナーに払う報酬の額が多すぎたり少なすぎることが発生します。特にガス不足は、DeFiブームの中で何度も問題になってきました。ユーザーの利便性は著しく低下し、その結果、他のEVMチェーン上で展開されるDeFiが注目を浴びたりもしました。

そこでガスの価格を現在よりも予測しやすくするために、EIP-1559が考案されました。ユーザーはベース・フィー(基本料金)とオプションの手数料を支払うようになります。ベース・フィーは、ブロックスペースに対する需要に応じて、所定の割合で増減するように設計されており、前のブロックがどれだけ埋まっていたかによって測られます。

この提案では、取引手数料(BASE FEE)の一部をバーンするという性質上、議論の的となっています。このバーンは、マイナーが結託してBASE FEEを操作することを阻止することを目的としています。このバーンによる最大の経済的な利点は、イーサリアムの供給量が増えるのではなく減る可能性があることで、インフレするブロック報酬などを相殺することが期待されています。

このEIPは、イーサリアムでの取引がどのように含まれるかを根本的に変えるものです。ガス価格の変動が少なくなり、ETHの希少性が高まることが期待されます。この変化がどのように展開するかを見守ることが重要です。

ロンドンアップグレードに含まれるその他のEIP

EIP-3198:BASEFEEのオペコード

「EIP-3198」は、先ほど出てきた「EIP-1559」とセットになっているようなEIPです。「EIP-3198」は、スマートコントラクトがベース・フィーにオンチェーンでアクセスできるようにし、スマートコントラクトを使ったトランザクションを実行する場合でもガス代の払いすぎが起きないようにするものです。

EIP-3541: 0xEFバイトで始まる新しいコントラクトを拒否

新しいコントラクトは0xEFバイトで始まることができなくなります。これは、将来のEVMの改善を見越した措置で、これ自体はあまりユーザーに大きな影響は及ぼしません。

EIP-3554: ディフィカルティ・ボムの2021年12月への延期

ディフィカルティ・ボムは、エコシステムがマイニングからPoS(プルーフ・オブ・ステーク)への移行に向けて取り組むための期限を設けることを目的としていました。

これはプルーフ・オブ・ステークへの移行準備が整っていなかったため、過去に何度か延期されました(EIP-649、EIP-1234、EIP-2384)。しかし今回は、比較的短い期間である2021年12月1日に延期されました。この短い延期は、プルーフ・オブ・ステークへの移行が今年中に実現するかもしれないという可能性を示しているのかもしれません。

ロンドンの次のハードフォークは上海

イーサリアム2.0に向けてのアップグレードはベルリンとロンドン、上海の3都市から名前を取った3ステップで計画されています。次のハードフォークである上海は、クライアントチームがマージの実現に集中するために延期されました。次のアップデートは既存のイーサリアムブロックチェーンとETH2.0のビーコンチェーンを統合するものとなります。

今回のアップグレードは一大イベントですが、ロンドンの後しばらくは他のアップグレードの予定はありません。特に最初の数ヶ月間は、上海に向けて会話が進む前にネットワークが安定して稼働するかどうかが焦点となるでしょう。

イーサリアム(ETH)の価格・相場・チャート

参照
Deploying the London bridge to new horizons
London Mainnet Announcement

===================
stakefish 広告
この記事は大手マイニングプールを運営するf2pool及びステーキングサービスを提供するstakefishからコンテンツ協力を得て提供しています。

f2poolはBTC、BCH、ETH、ETC、DASH、XMRなどのマイニングプールを運営しているほか、インサイトやユーザーが楽しめるツールなども提供しています。

stakefishではEthereumをはじめとした様々なノード運用の実績を元にサービスを提供しており、ユーザーは秘密鍵を渡すことなくステーキングができます。stakefishのサービス詳細を知りたい方は是非下記のリンクをご参照ください。

参照:https://stake.fish/ja/

おすすめの記事
【墨汁速報】被害額約360億円12万ETH以上 イーサリアムとSolanaのブリッジ”Wormhole”がハッキング被害
仮想通貨ニュース
【墨汁速報】被害額約360億円12万ETH以上 イーサリアムとSolanaのブリッジ”Wormhole”がハッキング被害
イーサリアムとSolana(SOL)とのブリッジを提供するプロジェクト「Wormhole」はハッカーによって約360億円分のETHが流出した。対象のハッカーの保有するアドレスは93,750ETHを保有しており、Wormhole公式の発表によると合計で12万ETHが被害対象になっているという。