インド準備銀行(RBI:Reserve Bank of India)の総裁シャクティカンタ・ダス(Shaktikanta Das)氏は、12月21日の声明で、暗号資産(仮想通貨)に包括的な禁止令を制定しなければ、新たな金融危機が仮想通貨から始まるという見解を表明しました。
仮想通貨に厳しいインド中央銀行の姿勢
12月21日に行われたBFSI(銀行・金融サービス・保険)サミットにおいてダス氏は、FTX破綻の事例を引用して、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの仮想通貨は金融に対する脅威であり、仮想通貨市場の成長を許すべきではないとも主張しました。
「仮想通貨を禁止すべきだというのが我々の見解だ。規制を設けながら市場の成長を許すことは、次の金融危機を引き起こす要因になるだろう。仮想通貨には根本的に価値がなく、マクロ経済と金融安定性を脅かす潜在的なリスクを秘めている。私は仮想通貨に公的利益や公的目的があるという信頼できる議論を、未だかつて聞いたことがない」と、ダス氏は強い口調で述べています。
RBI総裁であるダス氏の発言は、インド中央銀行が長年抱き続けている、仮想通貨に対する否定的な姿勢を一層明確にするものでした。インド中央銀行は2013年に投資家に対して、仮想通貨投資への注意喚起を行っています。また2018年には商業銀行に対して、仮想通貨企業に向けたサービスを禁止するように求めていますが、これは2020年に最高裁判所により棄却されています。
仮想通貨への規制が逆効果に?
ダス氏の発言の裏には、中央銀行が推進するCBDC(中央銀行デジタル通貨)いわゆるデジタル・ルピーの発行があると考えられます。11月1日にデジタル・ルピーのテストを行い、RBIは12月1日には小売仕様デジタル・ルピーのパイロット・プログラムをローンチしました。このプログラムには、インドステイト銀行、ICICI銀行、Yes銀行、IDFCファースト銀行という、インド国内の4行が参加しています。
また、中国のCBDCが徐々に展開していることにより、これまで基軸通貨として扱われていたアメリカドルの主権がゆらいでいるのではないかと米国議会で議論が繰り返されることも、インドがプレッシャーを感じる要因になっているようです。
しかし、インドは世界第二位の人口を誇っているにもかかわらず、仮想通貨に反対する政府の姿勢と重い税負担により、さまざまなビジネスの運営が困難になっています。仮想通貨の規制が近い将来、優秀な頭脳の国外流出を招くことに疑いの余地はなく、インドの苦悩は、この先さらに深まるかもしれません。
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