地域で異なるビットコインの価値、日本と南アフリカでは過去最高レベル

現在のビットコイン(BTC)価格は5万2,000ドル前後で推移しており、過去最高値の6万9,000ドルにはまだ遠く及びませんが、円建てではすでに過去最高値を更新しています。同様に南アフリカでも最高値に迫っています。地域経済の状況により、ビットコインの価値が異なるという奇妙な状況が現れているのです。

通貨価値が不安定な南アフリカの場合

南アフリカ共和国の大手暗号資産(仮想通貨)取引所VALRによると、同国の通貨ランド(ZAR)建てのビットコイン価格は、2月15日に100万ZAR(約790万円)を突破して、2021年11月10日に記録した105万7,000ZARの過去最高値に、あと6%にまで迫っています。

地域の経済状況から生じるビットコイン価格の違いは、トレーダーの戦略にも大きく影響します。南アフリカでは、投資家が自国通貨ランドの将来に不安を抱いており、同国大統領による教書演説も、この不安を鎮静化する効力をほとんど発揮していません。

オンライン・ニュースメディアのThe South Africanは、「直近の週でもランドは、新興市場や先進諸国の通貨に対してさらに弱くなっている。シリル・ラマポーザ(Cyril Ramaphosa)大統領の演説も、自国通貨ランドの信頼回復にはまったく役に立っていない」と強い調子で非難しています。

ランド安の背景には、2024年5月に控える大統領選があります。繰り返し起こる停電や物流サービスの停滞などにより、国民は政権与党のアフリカ民族会議(African National Congress)に強い不満を抱いているからです。こうした状況下では、自国通貨よりもビットコインの価値が高まるのは自明で、南アフリカでは仮想通貨ビジネスが、金融セクター行為監督機構(Financial Sector Conduct Authority)からライセンス認証を得ると見られています。

縮小経済が続く日本の場合

日本でもビットコイン価格は790万円まで高騰し、大手取引所のbitFlyer(ビットフライヤー)では、円建てでの過去最高値を更新しました。しかしこれは円安ドル高の産物であり、半年間以上続く縮小経済で、日本の市場に対する投資家の信頼は低迷しています。

日銀は縮小経済下でのマイナス金利政策というジレンマを抱えていますが、大手総合金融INGグループのシニア・エコノミストであるミン・ジュ・カン(Min Joo Kang)氏は、「日銀はあらゆる政策転換に対して、今後さらに神経質になるだろう」と述べ、日銀の政策が容易には変わらないという見解を示しました。

一方で日銀は、マイナス金利を転換するきっかけとして、春闘に期待を寄せています。しかしビットコイン取引と仮想通貨ビジネスの拡大に、十分な流動性を与えるレベルにまで経済が成長するには、まだ時間がかかるだろうというのが大筋の見方です。円建てで過去最高値を記録したとはいえ、日本では南アフリカほどビットコインに対する期待感は高まっていないようです。

ただし日銀は中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入には前向きであり、現在の法定通貨である円との共存も可能という見解も示しています。

参考
How Bitcoin’s (BTC) Price Rally Affects Crypto Investors in Key Regional Economies

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