急速に増加するInitial DEX Offering(IDO)
IDO(イニシャル・DEX ・オファリング)は、2021年に急速に件数が増えている資金調達方法です。IDOとは中央集権型の取引所ではなく、分散型取引所(DEX)を介した資金調達全般を指します。
その多くはIDOに特化したプラットフォームを用いて行われます。2021年時点でIDOで積極的に使われているプラットフォームは、分散型取引所Balancer(バランサー)を用いたInitial Liquidity Offering、IDOに特化したスワッププロトコルであるPolkastarter(ポルカスターター)、AMM(自動マーケットメーカ)プールと組み合わせたPancakeSwapやSakeSwap、ダッチオークションを実行できるMESAなどが主流です。主にイーサリアム(Ethereum)やバイナンス・スマート・チェーン(Binance Smart Chain)上のプロトコルを経由して行われています。
2021年1~4月間のみで、推定100件以上のIDOが全体で実施されており、代表的プロジェクトとしては、Perpetual SwapやRadicle、Mask Network、Razor、Polkamarkestsなどがあります。
暗号資産業界における資金調達手法の変化
急速にIDO件数が増えるまでの時系列やこれまでの背景について解説します。まず2017年頃は無秩序なICO(イニシャル・コイン・オファリング)がトークン売り出しのトレンドでした。プロジェクト側が自身でICO用のスマートコントラクトをサイト上でデプロイするという形式です。
その後、ICOが下火になり新たに生まれた資金調達方法がIEO(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)です。2019年初頭にバイナンス(Binance)で実施された資金調達手法です。取引所が最低限のデュー・デリジェンスを行ったプロジェクトを売り出し、その後は当該取引所に上場が約束されているという観点から人気を集めました。2019年から2021年の現在に至るまでBinanceやFTXなど一部のグローバル取引所内で活発に実施されています。
2021年すでにIDOは100件以上
IEOのトレンドが終わることを待たず、新たに登場した資金調達モデルがIDOです。IDOに該当する最初のモデルが、2020年4月に合成資産などを形成するプロトコルのUMAが分散型取引所のユニスワップ(Uniswap)で実施したInitial Uniswap Listingです。
Uniswapは、イーサリアム上で誰でも使用できる分散型取引所です。誰の許可を得ずともトークンを上場できることと、取引参加者がいなくとも流動性プールにデポジットされているトークン在庫量に応じて、自動でアルゴリズムが価格を提示する特徴があります。資金調達側のプロジェクトがトークン在庫を最初に置くことで、実質的にトークンセールを行ったのがUMAでした。
UMAはこの手法によって、中央集権型取引所のサードパーティーに頼らずに資金調達を実行し、分散型取引所に取引流動性を作ることに成功しました。しかし、Uniswapでの資金調達を実行することによる問題も発生します。Uniswapでは、流動性プールに預託されているトークン在庫量が常に5:5に設計されていることから、需要による価格カーブの作り方が固定されてしまいます。つまりトークンの売り出し価格の調整が限定されます。
このようにUMAが実施したInitial Uniswap Listingは、分散型取引所でのトークン売り出しの最初の事例を示したものの、資金調達手法としては不完全な点も明らかにしました。これを解決するためBalancerのようなより自由度が高い流動性プールを構築できるAMMが利用されたり、IDO特化のプロトコルなどが登場し、それらの上でIDOが実施されるようになりました。
結果、大小さまざまなプロジェクトがIDOを行い、その件数は2021年だけでも推計で100件以上になっています。これは明確に2021年の新しい資金調達トレンドであると言えます。