状況が明らかに上向きの暗号資産業界

暗号資産業界の事実上の活性化指標となっているビットコイン価格であるが、直近では日本円で95~100万円程度で推移しており、もどかしい思いをしている人は少なくないことだろう。一方で、暗号資産業界がこれから盛り上がっていく土台は確実に固まりつつある。

今回はその一端をご紹介していこう。

優良プロジェクトが次々とメインネットをリリース

2017年から2018年にかけ、ICOブームが到来した。ICOではプロジェクトが玉石混交で、詐欺プロジェクトが多く登場し、その後の資金調達がIEOやSTOにシフトしていったのはご存知の通りである。

2020年になり、かつてのICOブームで資金調達をしたプロジェクトのいくつかは、メインネットの本格稼働にこぎつけている。特に2020年は、それらが本格的に芽を吹き始めている。注目プロジェクトを3つ紹介する。

Cardanoは、もともと2017年9月29日にByronメインネットがリリースされていたものの、中央集権な構造になっており、かつスマートコントラクトが統合されていない状態であった。これは、査読を経るピアレビューアプローチと形式的検証を加えた慎重を重ねた開発方針によるもので、来たる7月29日にShellyメインネットがリリースされる。Shellyからはノードの分散化が開始され、Cardanoがより本来のブロックチェーンらしくなっていく。

Polkadotは、ブロックチェーンの相互運用性を高めるプロジェクトで、5月27日にメインネットがリリースされた。今まで独立してブロックチェーンで扱われていたデータやアセットが、異なるブロックチェーンと相互接続され、真の意味で「価値のインターネット」が実現できるようになる。また、Substrateフレームワークにより、自分のビジネス向けにカスタマイズされたブロックチェーンを簡単に構築可能になっており、ブロックチェーンの開発障壁を大きく下げることが実現できる。

Filecoinは、分散型ストレージのプロジェクトである。それ単体では、大衆による分散型ネットワークを維持できないIPFSにおいて、報酬レイヤーを提供することでネットワークの持続性を高めることを意図している。ICOの資金調達歴代トップ5に入り、今夏にメインネットローンチが予定されている。既にマイニングや先物の商材が盛んに開発されるほど、非常に注目度が高くなっている。

暗号資産から派生する製品やサービスの発展

前述のプロジェクトは、いずれも暗号資産が介在するパブリックブロックチェーンのプロジェクトである。プロジェクトそのものの他に、最近では暗号資産を扱う製品やサービスが充実してきており、ビジネスや一般消費者にとってより利用しやすいものが登場しつつある。

暗号資産業界で、最も競争が激しい分野は取引所になる。取引所は、開発をするだけだと数千万円程度で済むものの、その後のチェーンのアップデートの対応やセキュリティ維持などを含めると、運営の負担が尋常ではなく大きい。そこで、台頭してきたのが取引所のクラウドサービスである。クラウドサービスは以前から存在はしていたものの、2020年は大手の取引所がこれまで培ってきたノウハウをもとに、クラウドサービスを展開する動きが目立った。今や、年間数百万円からのコストで暗号資産取引所が運営できるできるようになっている。

また、一般向けのサービスとしては、暗号資産チャージ型のプリペイドカードが目立ってきている。現実的に、そのまま暗号資産で決済するという使い方は、消費者と店舗の負担が大きく、当初期待されていたほどまでの普及が進んでいないのが現状である。最近では、暗号資産を一旦ドルなどの法定通貨に両替し、それをチャージするプリペイドカードを発行する事業者が増えてきている。当初は、銀聯やマスターが中心であったが、最近はVISA のネットワークを採用したカードも出てきており、以前にも増して競争が激化している。

この他にも、暗号資産を貸し出すことにより利息を得るレンディングは、COMP、LENDなどをはじめとするDeFiトークンの盛り上がりからも、利用者が拡大していることを伺い知ることができる。

さらに、PoSベースの暗号資産をステーキングして新たに発行される暗号資産を得るステーキングプールもイーサリアムのPoS移行を踏まえて増加の一途をたどっており、保有資産を積極的に利活用できるサービスが増えつつある。

ビットコインのファンダメンタルズの改善

事実上の暗号資産業界の活性化指標となっているビットコイン価格は停滞しているものの、そのファンダメンタルズは大幅に改善してきている。

ビットコインは5月12日に3度目となる半減期を経た。半減期は価格の上昇材料とされるのが業界の認識であるが、すぐに価格が上昇に転じるわけではない。過去の半減期後の値動きと照らし合わせると、3~6ヶ月程度の時間が必要となる。ビットコインは半減期から3ヶ月が経とうとしており、業界の認識通りになるのであればそろそろ価格が上昇しても良い頃だと考えられる。

加えて、ブロックチェーン専門ニュースサイトのビットコイン価格に関する記事は、概ねポジティブ目線の傾向になっている。特にビットコインの価格予測モデルで最も有名なPlanB氏の最新モデルであるStock-to-Flow Cross Asset Modelは、ビットコイン価格が今後4年で28.8万米ドルになるとの予測も存在しており、業界で賛否両論を巻き起こし多くのニュースサイトで取り上げられた。

また、暗号資産のデータ分析を行っているThe Tieは、ビットコインに関するソーシャルメディアのツイートやGoogle検索が大幅に減少しているにも関わらず、ビットコイン価格が維持されていることについて、機関投資家がビットコイン購入を進めていると結論づけている。

機関投資家参入の流れを裏付けるかのように、今までは対個人が中心であった暗号資産取引所において、明確に機関投資家の利用を意識した取引所が登場している。香港に本社を構え、中国やロンドンに拠点を置くAAXは、ロンドン証券取引所グループの技術企業であるLSEGテクノロジーのマッチングエンジンを世界で初めて採用した。従来からの金融と同等のサービス品質の提供を実現する。AAXのCEO Thor Chanは、暗号資産業界の流れについて「我々は、プロトコルトークンやDeFiトークンの開発状況を注視しており、今後のデジタル経済における価値ある資産となる可能性を秘めていると考えています」と述べている。

総合的に見た暗号資産業界

現状のビットコイン価格は停滞している一方で、以前からローンチしたプロジェクトがメインネット稼働に至っており、プロジェクト以外の対ビジネス・消費者向けのいずれの商品やサービスにおいても暗号資産を扱いやすい土台ができ上がりつつある。

また、個人投資家のビットコインの関心が減る一方、機関投資家のビットコイン購入が促進されていると考えられる。加えて、従来からの金融のサービス品質を満たした機関投資家向けのサービスが登場してきていることからも、ビットコインのファンダメンタルズは改善をしてきているといえるだろう。

全体を俯瞰して見る限り、暗号資産を取り巻く状況は以前にも増して上向きである。

AAX日本コミュニティ(@aaxjp1

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