【墨汁速報】破産の仮想通貨レンディング“セルシウス”1668億円の損失を公開 救済案を断った理由とは?

7月14日付けで米国で破産申請となるチャプターイレブンを提出した仮想通貨レンディング企業のセルシウスネットワーク(Celsius Network)が、現在の財務状況を公開した。資産に対して損失が大幅に上回っており、12億ドル(約1,668億円)の損失があることが発覚した。

事前のFTXの買収案が出たときのリークでは約20億ドルと報道されていた。

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セルシウスが約1,668億円の損失を公開

14日の破産申請に伴い、15日にセルシウスの最高経営責任者(CEO)であるAlex Mashinsky氏と顧問弁護士が現在の財務状況を公開した。7月1日には米仮想通貨取引所最大手のFTXがセルシウスの救済を目的とした買収案を提示していたが、貸借対照表(B/S)で約20億ドルの損失があることから手を引いたとされていた。

CEOのMashinsky氏により裁判所に提出された資料によるとこの財務状況には10万ユーザーを超える債権者のほかに子会社も含まれており、セルシウスは通常その期の中間B/Sを作成しないことから、実質的には異なる可能性があるとしている。

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破産申請チャプター11(Chapter 11)とは?

セルシウスが破産申請を行ったチャプターイレブン(Chapter 11)とは、破産した仮想通貨ヘッジファンド「スリーアローズキャピタル(Three Arrows Capital)」の資産凍結保護を目的としたチャプター15とは異なり、「主に企業の再生を目的」としたものであり債権者と弁護団の了承を得つつ運営を行うというものだ。

セルシウスによると債権者は10万ユーザーにも上り、1000万ドル(約14億円)を超える債権者は20企業存在し、最も大きな債権者はファロスUSD(Pharos USD)というファンドが無担保で8100万ドル(約112億円)を貸し付けている。

このトップ20企業の中には買収を提案したFTXのアラメダリサーチ(Alameda Research)も入っており、金額は1,277万ドルとなっている。チャプターイレブンは申請後に債権者の取り立てが停止され、セルシウスと債権者間でこれらの負債を見直しながら原則120日以内に再建計画を建てる必要がある。

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セルシウスが救済案を拒否した理由

2016年に12万BTCがビットフィネック(Bitfinex)から盗まれた際、再建に協力したバンク・トゥ・ザ・フューチャー(BnkToTheFuture)はセルシウスに対して「レンディングをしていたユーザーファースト」として救済案を提示していた。また同社はオンライン投資プラットフォームであり、コロナショックで打撃を受けた2020年にもバンク・トゥ・ザ・フューチャーを介して多くのユーザーがセルシウスを利用しているという。

さらにこのバンク・トゥ・ザ・フューチャーはセルシウスの株主であり、ファンディングラウンドのシリーズBにおいて7.5億ドル(1,042億円)を投資している。主な救済案としてはリスクのある2つのプランと2016年のビットフィネックスと同様の「再建トークンであるBFXを発行し、債権者の売却と月ごとの買い取り」で返済するスタイルだ。

このBFX債券トークンの発行は「ビットフィネックス商法」と呼ばれ、2017~2018年にかけて所在地不明の仮想通貨取引所のハッキング時に用いられていたが批判の声が非常に大きかった。

セルシウスはニュージャージー州を拠点とする米国企業であり、米国証券取引所(SEC)の管轄下にあるため証券取引法などを考慮しても上記を受けることは難しかったと推測されるだろう。またバンク・トゥ・ザ・フューチャーが株主であり、さらに株主の顧客が同社プラットフォームを介して利用していたことも財務状況をギリギリまで公開できなかった理由であると見られる。

未だ具体的な再建案は見えないが、ビットコインが長期下落トレンドに陥っている現在の相場では非常に厳しいだろう。

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