分散型VC「DAOLaunch」CEO今山朔郎氏インタビュー:NFTを利用した新しい投資の世界

分散型VC「DAOLaunch」とは

コインチョイス編集部(以下、編):分散型ベンチャーキャピタルという仕組みは業界初の試みと思われますが、DAOLaunchの開発に至ったきっかけ・経緯を教えてください。

今山朔郎氏(以下、今山氏):ご存知のように去年から分散型金融(DeFi)やイニシャル・デックス・オファリング(IDO:Initial DEX Offering)によって、誰でもDEX上に自由に自身で作成した通貨を上場するトレンドが生まれ、ポルカスターター(Polkastarter)などに代表されるローンチパッドが登場し始めました。

ローンチパッドの基本的なスタイルとしては、クリプト界でも有名なベンチャーキャピタル(VC)たちがプライベートセールなどで資本を入れ、ホワイトリストを実施して少ない枠を一般投資家が奪い合う形になっています。この時点でVCと一般投資家とでは投資優位性が違うので、当初はより良い立場で投資ができるようにクリプトVCとしてブランディングすることを考えました。

しかしながら周りを見てみると、クローズドで資金を集めてから一般投資家に対して高く売るような手法に対して文句を言っている人がたくさんいます。株式では一般的だと思うんですが、そもそも閉鎖的な金融ビジネスにおいてクリプトは、より自由な競争・民主的な革命をもたらそうとしているのに、クローズドになってしまっていては本末転倒です。

スタートアップ投資の民主化というのは、フェアローンチなどいくつかのアプローチはすでにありました。しかしながら、スタートアップ投資の主流になっているかと言うとそうではなく、やはりプライベートでのVCによる出資が一般的だと思います。

この流れにも理由があると思っています。実際VCに出資してもらえるとなった場合、彼らは資本だけを提供するわけではありません。さまざまなネットワークや取引所、マーケティングなど、非常に多くのサポートも提供してくれています。これらのサポートを、一般投資家に期待するのは難しいでしょう。

VCは投資家としてブランディングされており、スタートアップに対して実際に多くの価値を与えているからこそ有利な投資条件をもらえます。スタートアップ側もVCからのプライベートでの支援を求めるようになっています。実際に、私たちも資金調達のラウンドでそのように感じました。

しかし、スタートアップ投資の民主化・自由競争化には大きな需要が存在すると思っています。そこで、世界中の個人投資家が、まるでVCのように投資家として自由に自身をブランディングして、有利な投資条件をオンチェーンで交渉できるようなプラットフォームを作ったらバズるんじゃないかと思いました。世界中のどんな投資家でも分散型VCとしてVCビジネスを展開することができれば、よりスタートアップ投資が自由競争化してこの業界に大きな利益をもたらすのではないかなと思い、このDAOLaunchを始めました。

編:DAOLaunchの分散型ベンチャーキャピタルとは、具体的にどのようなプラットフォームなのでしょうか? クラウドファンディングやIDOなど、様々な資金調達プラットフォームがありますが、それらとは何が違うのでしょうか?

今山氏:スタートアップの資金調達が全てオンチェーンになります。例えば、株式投資型クラウドファンディングの場合、その多くは投資回収(Exit:イグジット)及び上場ができません。しかし、クリプトの場合、誰でもが変動する価格の上でトークンを売買することができるというのを上場と定義するならば、ユニスワップ(Uniswap)などの自動マーケットメーカー(AMM)を利用することによって、大きなコストや手間なく、誰でも上場することができます。

そのためDAOLaunch上では、Exitをスマートコントラクトで担保するという手法をとっています。正確には、集めた資金の中からどのくらいの割合を流動性として追加し、追加した流動性はどのくらいの期間ロックされるか、どの価格でリストするのかなど、詳細なExit情報を投資する前から確認することができます。これはすでに私たちがリリースしているベータ版アプリにて実装しています。投資実績に応じてオンチェーンで投資条件を交渉できるようになるのは、また次のステップです。

次に、他のIDOプラットフォームと比べてDAOLaunchの大きな違いは、ネイティブトークンであるDALのユーティリティを「投資枠(アロケーション)の確保」に設けていないことです。

通常ローンチパッドのトークンユーティリティモデルは、これから稼働するプロジェクトのアロケーションを確保することです。しかしながら、現在のIDOプロジェクトは集客のためにリストするプロジェクトの投資利益率(ROI:Return of Investment)を高めなければならず、インディーゴーゴー(IndieGoGo)などの一般的な資金調達プラットフォームと比べて、プラットフォームとしての資金調達総額は少なくなります。

これはビジネスモデルの構造上大きなデメリットをもたらしています。資金調達額の1%~5%を手数料としてもらうことを主なビジネスモデルとして採用しているローンチパッドが多いのですが、資金調達合計額が少なくなればなるほどあまり儲かりません。

また、僕は現在のIDOがもたらている革命はもっと大きな可能性を秘めていると考えています。第三者機関の介在なしに流動性を提供し、価格がつくという技術は全てのスタートアップ資金調達に対して大きな革命をもたらすものだと思っています。

僕らがやろうとしていることはVCビジネスをブロックチェーン上に持ってきて、スタートアップの資金調達により強い自由競争を持ち込むことです。トークンユーティリティについては「有利な投資条件を交渉できるDVC-NFTをMint(発行)できる」というところに重点を置いています。

DVC-NFTとは「Decentralized Venture Capital NFT」の略で、これを自身の応援するプロジェクトに対して投票することで投資枠を確保します。全てのプロジェクトはその進捗やマーケット評価によって、DAOLaunchからいくつかの評価でランク分けされ、過去投資したプロジェクトの評価実績が良ければ良いほどDAOLaunch上でオンチェーンで有利な投資条件を交渉できるようになります。

現在VCのビジネスモデルは、投資実績・ポートフォリオを基に自社をブランド化して、良い投資条件を確保することです。彼らは、スタートアップに対して提供可能なネットワークやマーケティング、人材などの付加価値を交渉材料にしてより良い条件で投資し、それによって成功の投資実績を挙げ続けています。

一般投資家がVCのように投資家としてブランド化するためには、自身が投資したプロジェクトを応援することに対して、VCのような視点でのインセンティブを設けるようにしなければなりません。そこで、現在のVCのビジネスモデルと同じように、良い投資実績を挙げた投資家に対して、より良い投資実績をオンチェーン上で担保するような仕組みをDAOLaunch上に構想しています。

アプリのデモムービー(Main1.0)は、こちらから見ることができます。
https://vimeo.com/636945360

編:分散型環境でクラウドファンディングができるとなると、詐欺プロジェクトが発生することが考えられます。詐欺対策は十分でしょうか?また、DAOLaunchでなにか講じている対策はありますか?

今山氏:まず、Exitをスマートコントラクトで担保しているので流動性提供割合とロック期間においては、スタートアップが後から変更することはできません。また、私たちのプラットフォーム上ではトークン作成機能とトークンセール作成機能を利用することで、誰でもトークンの作成とトークンセールの開催が可能ですが、デフォルトで非認証ユーザーには表示させない仕組みを導入しています。

さらに投資家による投票システムを利用して、最も投票されたプロジェクトをピックアップする「分散型デューデリジェンス機能」を実装しています。全てのローンチパッド・取引所でプロジェクトのデューデリジェンスは中央集権的に行われていますが、DAOLaunchでは分散型ベンチャーキャピタルによる分散型デューデリジェンスを理想としています。

ただ全て分散型が良いとは限らないので、初めは基本的にDAOLaunch運営がプロジェクトと面会・デューデリジェンスし、ピックアップする形にして詐欺対策を十分に行います。また、分散型デューデリジェンスによって一つのプロジェクトがピックアップされた後、詐欺でないかどうかの最終的な確認を運営を含めてアドバイザリーボードの人たちで行います。

DAOLaunchが徐々に広がり、能力の高いDVC(分散型ベンチャーキャピタル)がより多く誕生してくれば、分散型デューデリジェンス機能にてよりよいスタートアップがデューデリジェンスされ、集まることを期待しています。

新しい「VC」の形

編:プロジェクトやスタートアップにとって、DAOLaunchを使うことはどのようなメリットがありますか?

今山氏:プロジェクト目線でのメリットとしては、まず全てオンチェーンにすることで投資家に対してより誠実さをアピールできる点になるでしょう。そして、金融作成プラットフォームとして非常に多機能な点も挙げられます。

現在、イーサリアム(ETH)とバイナンススマートチェーン(BEP)にて自由にトークンを作成することができます。それを利用して、トークノミクスをブロックチェーン上に設定、トークンセールの開催が可能です。また、他のIDOプラットフォームのような荒いピッチデック(プレゼン資料)ではなく、詳細とビデオをアップロードできるピッチデックの設定や、本人確認したアドレスだけ投資可能にするなどのホワイトリストアドレス設定なども自由に追加することができます。

また、DAOLaunch上ではトークンユーティリティを誰でも簡単に設定できることを想定した上で、「Build NFT Farm機能」を実装しています。これは、スタートアップが自由にNFTを作成し、自社トークンを利用してNFTを販売・ファーミングさせることができ、投資家にトークンユーティリティの一つとして訴求することができます。

さらにDAOLaunchでは、トークンセールを円滑にするため、「DAL Drop」や「DAL Launch Pool」など、DAOLaunch上でのエアドロップをマーケティングの一環として提供しています。これは、バイナンスのローンチプールと同じ概念で、NFTや上場するトークンをDALトークンのホルダーにエアドロップすることで、DAOLaunchネットワークにアクセスすることができる機能です。

通常、エアドロップはマーケティングのために行い、プロジェクトはその対価として何も得るものはありません。しかし、DAOLaunchでは、DALトークンホルダーを対象にしたエアドロップを行ったプロジェクトへの対価として、DALトークンを配布しています。

それだとDALを供給し過ぎなような気がするかもしれませんが、そうではありません。DALトークンホルダーは、DAL及びDALLPをステーキングするとポイントが付与され、ポイントを用いてDALを金利として受け取るか、またDAOLaunchが提供する特別NFT商品、または他のプロジェクトが提供するDALdropNFTを受け取るか選択できるようにしています。消費されたポイントに応じてDALを提供するので、プロジェクトに過剰供給するわけではなく、基本的にはメリットしかありません。

この考えは、ポルカドットのパラチェーンオファリングのように、応援するプロジェクトに対してステーキングすることに応じて、DAOLaunchの場合はNFTをインセンティブとして付与する仕組みです。

さらに、DAOLaunch上ではピックアップされたスタートアップに対し、DAOLaunchから「Grant」という形で、上場後にDAOLaunchで発生した売上を利用して彼らのトークンを市場から買い戻す(Buy-Back)という手法を取っています。これを僕らは、IBO(Initial Buy-Back Offering)と呼んでいます。

Buy-backされたトークンは自動的にバーンされ、DAOLaunchで選出されたことによる価値を市場から買い戻すという形を取ることで、DAOLaunchはスタートアップに対して、投票されたことによる価値を具体的な数字にして提供しています。この考えは、基本的にDAOLaunch上のDVC(投資家)が、投資したプロジェクトから得るキャピタルゲインで利益をあげるのが理想的だという考えの上に実施している行為です。

そして、私たちは分散型ベンチャーキャピタル構想として、投資家がスタートアップをどのように引っ張るのかを常に認識させるために、アドバイザリーリーダーボードを用意し彼らからのサポートが受けられるようにしています。アドバイザリーボードには、私たちのプロジェクトに出資をしてくれたVC、また共感してくれたVCや個人投資家など、さまざまな人たちが参加する予定です。チャレンジしたいさまざま起業家を支援していきたいと考えています。

編:DAOLaunchのもっとも面白いポイントを教えてください。

今山氏:DAOLaunchでは、スタートアップの投票に分散型DVC-NFTというNFTを使用した投票と、投資実績の記録をしていきます。投票に利用して投資実績が記録されたDVC-NFTには、実際に投資したスタートアップのトークンを自由にデポジットまたはウィズドローできるようにして、NFT上で誰でも自由に自身のシードトークンポートフォリオを作成可能にするできるようにする予定です。

一般的に、VCの価値というのは投資実績とポートフォリオからなります。DVC-NFTとしてすでにある投資実績に加えて、投資したトークンをデポジットさせて自身のポートフォリオをDVC-NFT上に作成できるようにしてしまえば、まるでVC企業またはVCのシリーズ自体をNFT上に作成するような概念を実現することになると思います。

NFTであれば、もちろん自由にオークションにかけて販売すれば、VC Entity/Series自体のバイアウト市場を開拓できるのではないかなと思っています。

また、NFTはレンディングも可能なので、例えば良い投資実績が刻まれたVCシリーズを借りることによって、良い条件で投資することができる。貸す人は、自身の投資実績に基づいて資産を投げることなく利鞘を稼ぐことができる。そんな新しい市場を作れたらなと思っています。

DAOLaunchの「これまで」と「これから」

編:2020年11月からの立ち上げと思われますが、コロナ禍の最中、どのようにしてプロジェクトを進めてきたのですか? DAOLaunch進捗に関するお話しを聞かせてください。

今山氏:開発チームがベトナム、マーケティングチームがイギリス、ドバイ、南アフリカ、そしてインドからも最近採用者がおり全体で20名くらいです。全てzoomやSlackなどでミーティングやコミュニケーションを行ってきたので、コロナ禍の最中だからと言って困ったことは一切ありません。また、全員が色々な国にいてそれぞれバックグラウンドが違うことは確実にリスクヘッジになると思っています。

僕自身、若い時期にバックパッカーとして色々な国で働いていたこともあり(アラスカでタクシー運転手をしていました笑)、そういう経験も海外VCなどに英語でプレゼンをする上で少しは役に立っていますね。優秀な人であればもちろん国を問わず採用し、一番大事なことはパッションを共有できるかどうかだと思っています。

編:DAOLaunchは、VC数社から既に投資を受けていますが、その経緯を教えていただけますか?また、彼らはDAOLaunchのどのような点に期待しているのでしょうか?

今山氏:DAOLaunchはZBC Capital、X21、BSCstation、Meridian Capitalなど数社のVCから出資を受けています。プレゼン時には、これから伸びる市場、他の競合とどのように差別化しているのかなど
に着目してプレゼンを行いました。

クリプトに詳しくない人たちとのギャップを埋め、彼らをIDOマーケット市場に流入させようとしていること、分散化ベンチャーキャピタルという構想が刺さったのかもしれませんね。

編:どのような人にDAOLaunchを使って欲しいと思いますか? また、興味がある方はどこへ連絡すれば良いでしょうか?

今山氏:DAOLaunchのビジョンに共感してくれて、一緒にDAOLaunchを盛り上げようとしてくれる人たちですね。

スタートアップに対してどんな価値を提供できるのかという視点を持ったVCや投資家の方とか、DAOLaunchをもっと広めてくれたり、初心者に分かりやすく説明してくれたり、盛り上げたりしてくれるような人がどんどん現れてくれれば、よりDAOLaunchも盛り上がると思います。

現在、DAOLaunch上でアドバイザーカウンセルおよびコミュニティリワードプログラムを開催しています。

※アドバイザーカウンセル詳細
https://daolaunch.net/the-daolaunch-advisory-council/

アドバイザーカウンセルでは、スタートアップに対してどんな価値を提供できるのかという視点をもったさまざまな業界の経験者が集まったカウンセルグループです。実際にDAOLaunchに価値をもたらしてくれた場合に報酬を提供するプログラムです。もちろん、ここのカウンセルには僕らに出資してくださったVCの方たちにも参加してもらっています。

※コミュニティリワードプログラム
https://daolaunch.net/the-daolaunch-community-rewards-program/

コミュニティリワードプログラムでは、DAOLaunchをもっと広めてくれる、初心者に分かりやすく説明してくれる、盛り上げてくれる方を対象として報酬を提供するプログラムです。ぜひ、ビジョンに共感して一緒に盛り上げようという人は参加してくださると嬉しいです。

他にも興味を持ってくれた人は、ぜひDAOLaunchコミュニティに参加してください。

編:最後に、日本国内の仮想通貨ユーザーに向けて、一言お願いします。

今山氏:インターネットとクリプトが巻き起こしている革命について、インターネットは情報ビジネスに民主化と自由競争化を、クリプトは金融ビジネスに民主化と自由競争化をもたらそうとしているものだと思っています。今みたいに、誰でもトークン作成できて、誰でも上場できれば価格が付くので、法整備はまた別の問題だとして、トークンを配布すれば誰でも金利〇%の金融商品を作れてしまう。

DAOも同じように上記の民主化の流れだと思っていて、VCによる資本投資環境に関しても必ず自由競争になるタイミングが来ると考えています。

投資資本の民主化はもちろんクリプトでもホットな話題で、フェアローンチとかバランサー(Balancer)のLBPとかもその最たる例ですが、まだまだ主流ではありません。その理由は、現在VCが提供しているものが資本だけではなく、ネットワークや人材などあらゆることを手伝ってくれているからだと思います。一般投資家が、VCと同じ立場で利益を得たい、継続的なROIを出していきたいならば、VCと同じ立場になって「どのようなカタチでスタートアップに貢献できるだろう」という視点で見てほしい。現在のローンチパッドのように、限られた少額のパブリックセール枠を奪い合うよりも、VCと同じ立場で大きく稼ぎたいならば投資家としてブランド化することが必要です。

そんな目線の投資家が増えればスタートアップ投資環境がより活性化し、スタートアップと投資家双方にとって良いことだと思います。そんな投資家が自身をブランディングできるような環境をDAOLaunchは作り、今後よりスタートアップにいろんな価値を提供して、新しいトレンドを巻き起こせるように頑張っていきたいと思っています。

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