日本発のパブリックブロックチェーンのAstar Network、およびShiden Networkとは?

本コラムでは、「Astar Network(アスターネットワーク)」、およびShiden Network(紫電ネットワーク)の概要について解説します。

Polkadot経済圏の日本発のパブリックブロックチェーン

Astar Network・Shiden NetworkはそれぞれPolkadot(ポルカドット)・Kusama(クサマ)経済圏で稼働する汎用的なスマートコントラクトを実行できるパブリックブロックチェーンです。

Polkadotは複数のブロックチェーンを相互接続するネットワークです。Relaychainという中心的なネットワークが核になり、各々が独自に機能するParachainがそれに接続して、相互運用性を持つというコンセプトです。

polkadot_relay_chain
参照:https://wiki.polkadot.network/docs/en/getting-started

Astar Network・Shiden NetworkはいずれもParanchainとしてPolkadot・Kusamaに接続することを計画しています。さまざまなブロックチェーンがPolkadotに接続されることが想定されますが、Astar Network・Shiden Networkは汎用的なスマートコントラクトプラットフォームとして開発されています。開発者はAstar Network・Shiden Network上で、DappsやDeFiアプリケーションの開発ができます。2021年10月時点でShiden NetworkはKusamaのParanchainのスロットを獲得済です。

今回は同ブロックチェーンの概要やエコシステムについて解説します。次節から同プロジェクトをAstar Networkと呼称することとします。Shiden NetworkはAstar Networkに対して姉妹ネットワークの関係性でほとんど同様のコードベース・スペックで機能していますが、こちらはKusama Networkに接続されます。

Astar Networkの概要

Astar Networkは、シンガポールを拠点とするStake Technolosies PTE. LTD.が開発するパブリックブロックチェーンです。同法人はシンガポールを拠点としていますが、創業者の渡辺創太氏は日本人です。また、元々の名称は「Plasm Network」でしたが2021年9月にリブランディングされ、Astar Networkに改称されました。

Polkadot自体もブロックチェーンですが、PolkadotはあくまでParachainを接続することに特化しており、スマートコントラクトのデプロイや実行をするために設計されていません。Astar Networkはその部分を担う汎用的なパブリックブロックチェーンで、PolkadotのエコシステムにおけるDAppsハブというコンセプトです。

Astar Networkの主な特徴は以下の通りです。

マルチバーチャルマシン

Astar Networkはマルチバーチャルマシンです。

イーサリアムのスマートコントラクトを実行できるEVMを備えています。これまでイーサリアム上で開発していた開発者は、大きなリファクタリングを行わずにAstar Networkにアプリケーションを移植できます。またAstar NetworkはEVMだけでなくWASMでも開発ができ、Rustでアプリケーションが実装できます。

Astar Network以外でも最近はより開発の柔軟性が高いWASMを実装するブロックチェーンが増えていますが、Astar NetworkにおいてはEVMとWASMの両方を備えています。

コンセンサスメカニズム

ローンチの初期においてはPoA(Proof of Authority)で稼働して、その後安定を確認してからNPoS (Nominated Proof of Staking)にシフトします。

DAppsステーキング

Astar Networkの重要な機能としてDAppsステーキングがあります。この機能はAstar Networkのネットワーク内でDAppsを増やすために開発者向けインセンティブを継続的に生む仕組みです。

Astar Networkの毎ブロック報酬の半分がDAppsステーキングのためにアロケーションされます。ネイティブトークンASTR保有者はバリデーターをノミネートをするだけでなく、DAppsのスマートコントラクトに対してノミネートすることができます。このノミネートされている量に応じてDApps開発者はブロック報酬を受取ることができます。毎ブロック新規で生成されるうちの半分がDAppsステーキングに割当されて、そのうち開発者とASTRをステーキングしたユーザーに4:1の割合で配られ、DAppsに対してノミネートをするユーザー側にもインセンティブがあります。

DAppsの開発者はマネタイズが困難なケースも多々あり、イーサリアムなどではファウンデーションがグラントを拠出していますが、Astar Networkではこのようなインセンティブ設計がもともとプログラムされています。とはいえ、執筆時点でノミネート対象になるプロジェクトはホワイトリスト制であり、ファウンデーション型グラントとユーザーの支持によって配当額が決定される仕組みの掛け合わせとも評価できるかもしれません。

マルチチェーン志向

複数のブリッジを実装する予定です。ブリッジの接続はPolkadot内に留まらず他のブロックチェーンに対しても接続する予定です。

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参照:https://astar.network/

レイヤー2

Astar Networkはレイヤー2の実装に対して積極的です。PoSであるため、2021年現在のイーサリアム等と比較してトランザクション性能は高いですが、将来的にはPoSであれレイヤー1だけでスケーリングすることは困難なためです。

Web3 Foundationがグラントを受け取り、EVMとWASMのどちらでも使えるZK Rollupsの開発を行っています。

まとめ

Polkadotは2021年末から2022年にかけて本格的に稼働する予定で、その中でAstar Networkも注目されると想定されます。日本発のパブリックブロックチェーンインフラの動向に期待したいです。

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