‎仮想通貨の有用性を証明するロシア・ウクライナ戦争

ロシアとウクライナとの戦争が勃発したことで、その衝撃は金融、商品市場などに大きな影響を及ぼし、S&P500と法定通貨は下落、供給不足の懸念からコモディティの価格は急騰しています。暗号資産(仮想通貨)市場は当初低迷しましたが、ビットコイン(BTC)はその地盤を維持しています。

安全な避難先として仮想通貨の本質を証明しつつある

ビットコインは、地政学的ヘッジと見なされている日本円(JPY)やスイスフラン(CHF)などを含む安全な法定通貨資産クラスよりも優れています。今回の危機に際して、仮想通貨は真の本質を明らかにし始め、単にもう1つの資産ではないことを証明しつつあります。ビットコインとS&P500指数との相関関係は薄れ始め、安全な避難場所としてのビットコインの時代が訪れ始めています。

ロシアの通貨ルーブルとウクライナのフリヴニャ双方によるビットコイン取引量は、ロシアの侵攻直後ピークに達し、両国における仮想通貨の重要性を強調しています。世界的な制裁の波の中で、特にロシアではビットコインやその他のデジタル資産に目を向けています。

仮想通貨の国境のない性質によって、ウクライナの政治的・社会的なメッセージを込めてサイバー攻撃を行うハッカーグループや軍隊を支援するため、世界から何百万ドル相当の仮想通貨が献金されています。ウクライナはBTCとETH、USDTによる寄付を受け入れ、侵攻から50日後に6,300万ドル(約77億円)余りを集めています。

銀行に頼ることは困難、匿名の仮想通貨取引に注目

政府が混乱しているなか、銀行に頼ることはますます困難になっています。ロシアとウクライナの国民は、外貨や銀行口座へのアクセスを制限する金融機関に代わる手段として、仮想通貨に目を向け、政府の関与のない匿名のシステムを求めるようになっています。

規制当局は、ロシア政府当局者が西側の制裁を回避するため、資産を仮想通貨に移す可能性があるという懸念から、仮想通貨取引所に対して制裁を遵守するよう求めています。取引所は制裁対象になった個人口座に関係する取引をブロックしており、例えばコインベース(Coinbase)は、ロシアにリンクする2万5,000件以上のアドレスをブロックしています。

一方でバイナンス(Binance)は、大量の仮想通貨を隠すことはほとんど不可能であると考えています。バイナンスのグローバルインテリジェンス&調査担当バイスプレジデントのティグラン・ ガンバラーナ(Tigran Gambaryan)氏は「仮想通貨は、政府が制裁を回避するための有効な手段ではない。仮想通貨を利用するのではなく、既に存在する金融システムを利用して数十億ドルを移動する方法はほかにもある」と語ります。

ロシア制裁で仮想通貨取引上の足並み乱れる

仮想通貨取引は公開台帳に記録されるために、身元を隠そうとする組織にとっては望ましくない永続的な記録が作成されます。

バイナンスの広報担当者はロイター通信に対して、「われわれは何百人もの無実のユーザーのアカウントを凍結するつもりはない」と語ります。ビットコイをはじめ仮想通貨の本質は、それが中立であるために発明されたことです。ロシアが仮想通貨の普及で世界第18位にランクされ、全体的な仮想通貨市場価値に14%貢献、世界で3番目に大きなマイナー(採掘者)であることを考慮すれば、これは市場にとって大きな打撃になるでしょう。

参考
Russia-Ukraine War Reveals Crypto’s True Nature

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