グッドラックスリー井上和久社長×シバタナオキ氏対談、ブロックチェーンはエンターテインメントを何に進化させる?

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グッドラックスリー井上和久社長×シバタナオキ氏対談、ブロックチェーンはエンターテインメントを何に進化させる?

仮想通貨だけでなく、人々の生活を大きく変えると期待されているブロックチェーン技術。その技術を用いた“ブロックチェーンプロダクト”は、コンテンツ・エンターテインメントの世界で無視できない存在になってきている。

福岡でブロックチェーンゲーム・コンテンツの開発を手がける「グッドラックスリー」の井上和久社長と、東京大学工学部研究室の同期で「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」著者のシバタナオキ氏の2人に「ブロックチェーンプロダクト」について伺った。今回はその対談をお届けする。
(文・編集:コインチョイス編集部)

『クリプトキティ(CryptoKitties)』がゲームを変える?

『クリプトキティ(CryptoKitties)』がゲームを変える?

※CryptoKitties公式サイトより

2017年11月リリースで、ブロックチェーンゲームで最初に流行ったとされるゲーム。

イーサリアム(ETH)で仮想猫の売買や交配が行える。運営元は、直売の仮想猫販売や、ユーザー同士の売買・猫の交配の際に手数料を徴収してマネタイズしている。

━━ブロックチェーンゲームの先駆け的存在「クリプトキティ(CryptoKitties)についての考えをお聞かせください。

井上和久氏決済利用か取引所での売買が基本だった仮想通貨が、ゲームでも使われてきているのが面白いです。

シバタナオキ氏手数料の徴収以外では、仮想猫の交配などもブロックチェーンを使っているんですか?

井上そうです。仮想猫のデータがブロックチェーン上にあるので、運営元以外でも仮想猫の取引が可能です。世界に一つしかない固有のものというのを、ブロックチェーン上に記録していくことで証明できるんです。

シバタブロックチェーンのどこにあるかで位置特定できるのは面白いですね。イメージ的には、あるゲームの中の自分のキャラクターを持ち出して他のゲームに使えるという訳ですね。クリプトキティってどれぐらい流行っていますか?

井上 2017年12月12日時点のデータで約15万人が遊んで、15億円以上の取引量がありました。1000万円以上の値がついた猫もいて話題になりました。

シバタ始まったばかりなのにかなり大きな金額が動いてますね。既存のゲームでも、こういう仕組みがあると面白いです。

井上拡張性があるのが面白いです。スマートフォンゲームは、運営が機能を拡張していきます。けれどブロックチェーンゲームでは、運営の予期せぬ拡張が生まれる可能性があり、そういった場合に、どのように対応してくかは課題です。(拡張を)推奨していくのか、制限するのか、運営次第です。

シバタ歴史的に見ると、自分たちの世界や権利、既得権を守った順から衰退していきますよね。その範囲をどこまでにするかが大切です。オープン化の波には勝てないと思いますが。

井上ブロックチェーンゲームの特徴として、データが資産化されるメリットがあります。ゲームの提供が終了してもブロックチェーン上にアイテムやキャラクターを残すことが可能です。

シバタゲームの中のキャラクターがゲームそのものと分離できるってことですよね。

井上従来のゲームはプラットホームやゲーム内限定ですが、ブロックチェーンゲームでは、ゲームを飛び出た広い範囲で使うことのできるイーサリアム(ETH)に変化させられます。ゲームで遊ぶことでイーサリアム(ETH)を増やせる。ブロックチェーンゲームはユーザーのニーズに答え、世界を豊かにすることが出来ると思います。

シバタ個人的にはキャラクターが永続的に残ること、ポータブルになること、この2点にすごく大きな可能性を感じます。

井上予想以上のエンタメを生むと思っています。グッドラックスリーで開発し、リリースしている3Dキャラクター「くりぷ豚(とん)」も、イーサリアムを使う育成系ブロックチェーンゲームです。ユーザーには、キャラクターの可愛さや、3京6000兆通りの多様な豚が生み出され、そのオリジナル豚同士をユーザー間でお見合いや売買できるところがウケています。これから拡張要素として、育てた豚を使った様々なミニゲームの開発を予定しています。より多くの人にこういうゲーム体験、エンターテイメント体験をして欲しいなって思っています。

一番流行っているクリプトキティでさえDAU(1日に遊んでいる人数)1000人ぐらいです。それで、億単位の流通はあるのですが、現状はコアな人たちだけが遊んでいます。私達は、ブロックチェーンゲームや仮想通貨に詳しくない人にも広めたいと思っていて、くりぷ豚ではチュートリアルを漫画にしたり、ユーザーインターフェースを出来るだけ分かりやすくする等の取り組みをしています。

シバタブロックチェーンを使って管理する話と、仮想通貨で売買できる話を分けたほうがいいと思います。ブロックチェーンを使ってキャラクターの移動を可能にする話は、とても良い。でも、それを仮想通貨と言った瞬間に関心がある人が急に減ってしまいます。イーサリアム(ETH)を持っている人は法定通貨を持っている人に比べたらずっと小さいので、この2つの論点を分けたほうが裾野が広がるし、結果として市場が賑わうと思います。

メディアの新ビジネスモデル『steemit(スティーミット)』

メディアの新ビジネスモデル『steemit(スティーミット)』

※steemit公式サイトより

steemit内に投稿された記事の作成者と評価者に仮想通貨が分配されるブログメディアサービス。ブロックチェーン技術を活用しており、steemit上で獲得したトークンは外部の取引所で売買可能。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)といった仮想通貨と交換することが出来る。広告以外の方法でブログの収益化を実現したビジネスモデル。

━━ブログサービス分野では新しいビジネスモデル、steemit(スティーミット)が話題ですね。

井上今までのメディアでは広告やアフィリエイト収入と読者が払って書き手がもらうシステムが一般的でした。Steemitでは書き手、評価した人、コメントした人も収入が得られます。しかし、「じゃあ、誰が払ってるんだ?」という疑問が生まれます。

シバタ誰が払ってるんですか?

井上トークンエコノミーという仕組みを利用しています。例えばブログを書いた人、コメントをした人、いいねをした人のメディア活動を労働とみなしてトークンを発行します。この定義をソーシャルマイニングと呼んでいます。トークンの価値が、その労働(メディア活動)によって担保されています。

シバタ steemitが発行するトークンは、どうやって価値が決まるんですか? 他の仮想通貨や法定通貨と取引するときはどうなりますか?

井上取引所で取引します。ビットコイン(BTC)の価値はマイニングが担保していますよね。マシンを買ってハッシュ計算して、その電気代等が価値の裏付けになっています。それに匹敵するのが、ブログの記事を書くことや評価することやコメントする行為になっています。

シバタ人類が起きている時間は有限だから、その限られた時間の中で行われた労働(メディア活動)がsteemitのトークンの価値になると。マイニングとは違う観点で有限性が担保されてるって、結構面白いですね。

井上ビットコイン(BTC)は世界の消費電力の0.6%を占めていて、アルゼンチンの消費電力に匹敵していると言われています。それってエコじゃないなと感じていました。直感的ですが、ビットコイン(BTC)のマイニングほど電力はかからないメディア活動の方が、世界のエコシステムに合っている気がします。

シバタ何をもって有限性を担保するかという話で、ビットコイン(BTC)の方は電力の生産量で担保しています。電力の生産量はなかなか増やせません。steemitは人間の活動時間は増やせないというところで、有限性を担保しています。どちらがいいというのは難しいです。「電気を使ったほうがエコ」の考え方もあれば、「人間の限りある時間をメディア活動ばかりに費やすのは効率的じゃない」みたいに疑問に思う人もいると思います。

井上 steemitはビジネスモデルの新しい形だと思います。今価値が認められていないものに、価値を見出しています。価値が小さくて、ビジネスとして成り立たなかったものをすくい上げていると感じています。

YouTuberを例にします。YouTubeの広告収入がお金になるレベルは10万再生以上で、数十万越えないとお金がもらえません。YouTubeで稼ぐというのはなかなか難しいです。steemitは始めたその日からメディア活動によってトークンがもらえるので、数円という小ささではあるけど、価値を認めていく。数円も繰り返せば、数千円になりますよね。

シバタなるほど。おっしゃることはよくわかります。どれぐらいユーザーがいるんですか。

井上DAUベースで約6万人です。登録アカウント数は約90万人で、累計投稿数はコメントを除いて870万以上もあります。steemitのトークンはコインマーケットキャップでの時価総額が717億円あります。一大メディアですね。

トークンエコノミーという観点では、最も成功しているもののひとつです。3月のトップランカーの方は1ヶ月で2200万円ぐらいの収益を得ていました。Steemitは、いいねを押した人・コメント入れたものに応じてトークンを配布するモデルです。ユーザーが知って良かったなど、広告っぽくない、商業的ではない記事が評価されやすいなと思います。ユーザーにとってより価値のある良質な記事を評価しましょうというシステムも作り出しているところが素敵ですね。

シバタ一方でこのsteemitが発行しているコインの価値の総額が700億円もあるというのは、逆に怖い気もします。何をもって700億円としているのか……。

井上 steemitのコインを使った用途が増えてくると価値を担保しやすくはなるかなと思います。今も一部何か買えたりしますが、なんでも買えるというレベルではないですね。

シバタ人類の活動時間の総和が有限だっていうところに価値を見出してトークンを発行しているというのがすごく賢いです。仮想通貨を得るには、法定通貨で仮想通貨を買うか、法定通貨を投資してマイニングするしかありませんでした。それが、ある意味自分の時間を投資することでこのsteemitのトークンがもらえるわけですよね。

井上そこが面白いんですよ。

シバタ労働を仮想通貨に変えることができる唯一の手段ということですよね。steemit以外の仮想通貨は労働(人間の有限な時間を使った活動)を仮想通貨に変換できません。法定通貨を持って仮想通貨を買うか、あるいは採掘する(マイニングする)かしかできなかった。初めて人間が物理的な時間と労力を使って仮想通貨を得られるって意味では新しいですね。

井上メディアやエンタテインメント領域の人と面白いですねって話をしていたら、ウチもやりたいって声が多いです。steemitのトークンエコノミーの仕組みを作るのは結構なエンジニアリング力がいるので、グッドラックスリーでその仕組みを作って、メディアに限らず導入していきましょうって構想が弊社の「LuckyMe(ラッキーミー)」です。このLuckyMeの仕組みを、広告だけのマネタイズに頼っているメディアに入れて、コミュニティを盛り上げたり、価値をしっかり収益として形にするきっかけになれば良いなと。

シバタさんが指摘した700億円の価値って、どう担保されているの?という話は重要です。ソーシャルマイニングだけを担保にするのではなく、他にも用途があったほうがいいです。そこは僕らはエンタテインメントの仕事でブロックチェーンゲームなどを作っているので、そこで使用できるように検討しています。横の繋がりを進める事業展開を考えています。

そして、ブロックチェーンゲームで課題になっているのが、決済スピードの問題です。

シバタ今の所実用化されている範囲で言うと、リップル(XRP)以外は無理じゃないですかね。

井上リップル(XRP)は中央での管理も入れることで決済スピードの問題をクリアしていますし、今様々なテクノロジーが出てきていますが、弊社も決済スピードの問題をクリアする工夫を入れていきます。

シバタ本質的に分散処理をするということと、決済のように数秒単位でトランザクションが走らなきゃいけないときは分散というコンセプトと矛盾しますよね。

井上決済スピードの問題が解決されれば、色んなゲームで使いたいよってニーズも出てくると思います。

シバタ全部をブロックチェーンに載せる必要はないと思います。クリプトキティで、仮想猫がブロックチェーンで管理されているのはものすごく意味があると思うし、それによってキャラクターやアイテムを別ゲームへ持ち出しが可能になるのが魅力的です。でも、それとイーサリアム(ETH)が交換出来て資産形成が出来るというのは、独立した話です。

井上ユーザーにとって価値があったり便利なものを、僕ら自身もユーザー目線で作っています。

なにがブロックチェーンプロダクトの起爆剤になるか

なにがブロックチェーンプロダクトの起爆剤になるか

シバタ一番面白いと思ったのはゲームの中のキャラクターのポータビリティを上げるという発想です。例えば「ぐでたま」(※グットラックスリーで配信中のアプリゲーム「さわって!ぐでたま」のこと)で育てたキャラを他のゲームに持ち込めるみたいに。

ただ、クリプトキティやsteemitがこのままの形で流行るかというと、むずかしいと思います。エンタメに関しては、強烈なコンテンツが必要です。

例えばプレイステーションを売るときに、ファイナルファンタジーがあったからプレイステーションを買うって人がかなりいました。ファイナルファンタジーのようなキラーコンテンツがクリプトキティかというと、多分違います。みんなが知っているものを持ってくることが大切なのではないでしょうか。

井上いずれ、みんなが知っているコンテンツがブロックチェーンプロダクトに来ると思っています。一方で今は黎明期、プラットホームに最適なコンテンツが立ち上がる時期でもあるので、両方チャレンジしたいです。

仮想通貨に触れるきっかけがくりぷ豚だったとなると嬉しいです。ゲームは何か新しい世界に触れるときのハードルを下げてくれます。仮想通貨と言われると人によっては怖くなってしまうけど、くりぷ豚ならちょっとやってみるか、みたいになったら良いですね。

シバタおっしゃる通りだと思います。あとは仮想通貨感をゲームの中で出さないことです。ゲームの中に「ETH」などは使わないほうが良いと思います。普通の人は「ETH」がわかりません。例えば0.0039ETHと言われても普通の人は計算できないと思うので、何か別の形に言い方変えたほうがいいかもしれません。

敷居を下げるという意味では、普通の人はレートで0.00xxxのような数字を見たらびっくりします。だって日本人で一番小さい単位は1円で、小数点になることはないので。

steemitのように労働の対価でトークンが稼げるというのを強調していくのはありだと思います。これから色んな意味で働き方が変わって副業が重視されます。そうすると昔は正社員で、1日8時間フルタイムで正社員で働くしかなかったものが、どんどん細切れになっていく。例えばフリーランスで3つの会社と仕事をしてますよって人がどんどん増えていく。それがもっと細分化されていくと、プロジェクト10個やってますみたいな人がもっとたくさん増える。凄く小さい時間でのコミットメントをきちんと正確に記録して、それに対して報酬が支払われる仕組みは良いものだと思います。

steemitの本質はメディアであることではなくて、労働をトークンに替える仕組みです。たまたまメディアってプラットホームで行われたのがsteemitってだけだったんですね。

※対談企画グッドラックスリー
コインチョイス編集部はそのやり取りを取材・編集した。

▼関連
仮想通貨イーサリアムで取引可能:Dapps活用のブロックチェーンゲーム「くりぷ豚」

▼参考
Cryptokitties
steemit

▼協力
株式会社グッドラックスリー
シバタナオキ:決算が読めるようになるノート

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