イーサリアム2.0の分散性はどのように評価されるべきか

イーサリアム2.0の基盤となるビーコンチェーンコントラクトには既に340万以上のETHがデポジットされており、これは3月8日時点のレートで6,000億円に相当します。これはデポジットされているETHの時価総額だけで暗号資産時価総額ランキングで17位にランクインできるほどの規模です。

ETH2.0のステータス

出典:https://launchpad.ethereum.org/

ビーコンチェーンはイーサリアム2.0が採用するProof of Stake(以下PoS)の稼働に不可欠なものであり、次世代イーサリアムのシビル攻撃対策やコンセンサス形成において極めて重要な役割を果たします。PoSにおいてはシビル攻撃対策や円滑なコンセンサス形成のためにネットワークにデポジットされている資産の合計額のみならず、誰がどの程度の額をデポジットしており、それらの主体がネットワーク運営に携わる者としてどのようなパフォーマンスを残しているかが重要です。

たとえば、6,000億円相当のETHがデポジットされていたとしても6人の富豪が1,000億円ずつをデポジットしている場合、このブロックチェーンは十分に分散されているとは言えません。また、仮に1,000人の運営者がいたとしてもそのうち800人のパフォーマンスが不安定な場合、ネットワークが安定稼働しているとは言えません。不安定なパフォーマンスとは、高頻度でオフラインになってしまうことやプロトコルのルールに反して二重支払い等の違反を起こしてしまうことを指します。

データを可視化する

ブロックチェーンの生データはフルノードを運用することで誰もが取得でき、ブロックチェーンがプロトコルのルールに基づいて運営されていることを検証することが可能です。これはパブリックブロックチェーンで叫ばれる「Don’t trust, verify(盲信よりも検証)」の精神を体現しています。プロトコルのルールに則った運営がなされているか否かを低次レイヤーの検証だとすれば、イーサリアム2.0がどのように運営されているかを検証することは高次レイヤーの問いとなります。

上述したような、イーサリアム2.0を保守するバリデーターの情報は、ブロックチェーンの生データの検証に留まらず、各取引所が運営するステイキングプールの情報や大口バリデーターのラベリングといったさまざまな角度からの検証が必要となります。より良いイーサリアムエコシステムの形成には、これらのデータを収集し、人間が理解しやすいように加工し、解釈し、その上で各ユーザーがイーサリアムの分散性向上のためにはどのような行動(例えばどのバリデーターに自身のETHを委任するか等)が必要とされているかを把握できるようにしなければなりません。

以上の問題を解決するためにユーザーに提示されるべき情報には以下のようなものがあります。

  • バリデーターのアイデンティティ
  • バリデーターあたりのステイクETH数量
  • バリデーターあたりのステイク由来の報酬
  • ネットワーク全体の分散性
  • バリデーターの稼働実績(時間、ダウンタイム、ペナルティ)

バリデーターのラベリング

さまざまなデータを提供する ナンセン(Nansen)はイーサリアム2.0のコントラクトアドレスにETHをデポジットしている大口アドレスをラベリングしており、上位にはKrakenやBinance、Staked.us、Stakefish、Bitcoin Suisseが名を連ねています。

ETH2.0デポジッターのデータ
出典:https://nansen.ai/

このデータを基にバリデーターの性質をさらに細かくカテゴライズすることも可能です。上位にはユーザーからの委任を集めやすい取引所やステイキングプールを運営する専門のバリデーターが目立ちます。

現時点でイーサリアム2.0用のアドレスにデポジットされたETHは引き出すことができませんので、この仕様の場合はセキュリティが大幅に下る懸念はありませんが、引き出しが可能になった場合には、それぞれのバリデーターのETHがどのようなイベントをきっかけにしてどの程度引き出され、結果としてイーサリアムのセキュリティが低下するかを把握することはネットワークの堅牢性を理解するために重要な指標となります。

バリデーターの稼働実績

ETH2.0イメージ
イーサリアム2.0では最小32ETH単位でのステイキングが可能です。しかし、資金的にも技術的にも一般ユーザーにはハードルが高いため、多くのユーザーはバリデーターに委任することになります。委任先がプロトコルに反する挙動を取りペナルティを受けてしまった場合には、ユーザーがデリゲートしていたETHも部分的にプロトコルに没収されてしまうリスクがありますので、委任先のデリゲーターは慎重に選ばなければなりません。
そのためにはバリデーター一覧を整備し、どのバリデーターが堅実に運用を行ってきたかのデータを一般に公開することが必要となります。これは多くのPoSを採用するブロックチェーンプロジェクトで整備されているデータではありますが、イーサリアムの場合はその額が大きく不正の発生によるエコシステムへの損害や金銭的な損失が大きくなる可能性があるため、複数のサイトによる情報の整理と公開が行われることが望ましいです。

結言

本記事で記述したようにイーサリアム2.0の稼働状況や健全度の図るための指数は未整備ですが、エコシステムの着実な発展を導くインフラとして極めて重要な役割を持っており、大口バリデーターとイーサリアム開発者を中心に開発されていくことが期待されます。

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■stakefish:https://stake.fish/ja/

stakefishイメージ

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