暗号型メッセージ・プラットフォームへの興味が高まる中、暗号化Web3チャット・アプリを提供するコム(Comm)社は8月25日、コインファンド(CoinFund)が主導するシード・ファンディングで500万ドル(約6億8,400万円)の資金調達に成功しました。
チャットアプリに
自らを「Web3のディスコード」と評するCommは、自社のアプリについてディスコード(Discord)やスラック(Slack)と同様の特徴を備えつつ、「キーサーバー(keyservers)」と呼ばれる技術により、E2E(end-to-end)暗号化で全データのセキュリティを保証するなど、それらを上回る機能性を提供すると述べています。
Commのチームは、チャット・アプリの集権的なバックエンドを置き換え、真に独立性があり暗号化された選択肢を提供することを目指しています。
CommのCEO(最高経営責任者)であるアショート・テボシャン(Ashoat Tevosyan)氏はこの点について、「顧客キーサーバーは我々の中心的な技術的進歩であり、多くの人々の個人データ管理を可能にする技術だ。CommはWeb3での独立したデジタル・アイデンティティー確立の能力を証明しており、ユーザーが商品であるという既存モデルの問題点を乗り越えるサービスを提供するだろう」と述べています。
またCommのチームは、調達した500万ドルの資金を、キーサーバーの構築に使用する予定であることを明らかにしています。
キーサーバーがカギになる
E2Eの暗号化モデルは、ワッツアップ(Whatsapp)やシグナル(Signal)などの人気メッセージ・アプリで使われています。しかもチャットのデータが、企業やアプリ開発者の手に渡らないようにする唯一の方法でもあります。
E2Eシステムは、チャット・データをユーザー自身の端末内に保存することによりセキュリティを保証する仕組みです。これは最も安全なオプションに思えますが、検索やバックアップなどより充実したチャット機能をサポートする際には、パフォーマンスに関わる問題を引き起こす可能性があります。
この課題を打破するために、Commはデータ・ストレージ技術、つまりキーサーバーの活用を予定しています。キーサーバーは、企業やアプリ開発者がアクセスできない個人用のストレージとして機能します。ユーザーがお互いにやりとりする時には、それぞれのコミュニティに準備されたキーサーバーにデータがアップロードされ、それをキーサーバーどうしが送受信するわけです。
さらに大量のデータが保存されるようになると、E2Eは一段と洗練され、より豊かなチャット環境を提供できるようになります。Commの初期のユーザーはWeb3のコミュニティになり、そのアプリはDropbox、Gmail、Facebookのようなメジャーなコミュニケーション・ツールにまで発展するかもしれません。
仮想通貨特化型のチャット・プラットフォームとは?
起業家のエラド・ジル(Elad Gil)氏は、ラインズ(Lines)と呼ばれるクリプトネイティブなチャット・アプリに投資しなぜこの分野が有望なのかについて、「皆さんのビットコイン(BTC)や暗号資産(仮想通貨)と私のものは同一だったので、ウォレットを通じて匿名のユーザーとやりとりする必要はなかった。しかしDAO(分散型自律組織)になると、Discordを使うだけでなく、さまざまなメンバーと調整する必要がある。さらにNFTになると、売買取引をするために直接相手とやりとりしたくなるかもしれない。そのためには、コミュニケーションをもっと便利にするための別な動機づけが必要だ」と語っています。
暗号型チャット・アプリは、すでに2021年11月にNFTマーケット・プレイスのレアリブル(Rarible)が、2022年6月には仮想通貨分析企業ナンセン(Nansen)が同様のアプリをローンチしています。
参考
・Crypto-native messaging platform Comm raises $5M in seed funding
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