分散型金融(DeFi)における「流動性提供」とは何か?

分散型金融(DeFi)は、さまざまなオープンソースの金融プロトコルを組み合わせて、金融サービスを構築できることが特徴です。例えば、メイカーダオ(MakerDAO)のプロトコルで発行したステーブルコインのDAIをカイバーネットワーク(KyberNetwork)のプロトコルを利用して他のトークンとスワップができたり、コンパウンド(Compound)でレンディングが行えたり一つ一つのプロトコルは単一機能でも、それぞれを組み合わせて金融取引を行えます。

盛り上げりをみせる分散型金融(DeFi)

DeFiにおける金融取引はスマートコントラクトで実行され、特定の第三者に資金を預ける必要性もないため、コードの脆弱性の懸念さえなければ、聞き覚えがない会社が展開する金融サービスでもユーザーとしては比較的軽微なリスクで使用できることが特徴です。

一方でDeFiに詳しくない人にとってコミュニティ内の会話で飛び交う単語の多くが聞き慣れないものだと思います。その一つに「流動性提供」という言葉があります。「Uniswapの流動性を提供する」「Balancerの○○のプールに流動性提供する」などといったことを耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。本コラムではこの「流動性提供」について解説します。

分散型金融(DeFi)における「流動性提供」とは何か?

流動性の提供は中央集権の取引所が自身、または第三者への依頼によって行っているマーケットメイキングを各参加者に外注しているのと同じ構造です。マーケットメイキングは特に取引所が新しいデリバティブ商品を上場させたり、新しいコインを上場させたりするときに行われます。

これは、初期においては売り買いのオーダーを提示する主体が少ないために、スプレッド(最も有利な買い価格と売り価格の差分)が開き、テイカーが不利な価格でオーダーを出さなければならないことを防ぐための措置です。分散型取引所(DEX)やマネーマーケットプロトコルは流動性がなくては、取引価格の面でマッチングせず機能しません。その最初の流動性を呼び寄せるプログラムこそが、流動性マイニングと呼ばれるトークンディストリビューション手法であったと言えます。

ただし、DeFiが中央集権取引所におけるマーケットメイキングと異なる点があります。それは、DeFiにおける取引手法は、中央集権取引所における板取引ではなくAMM(Automated Market Make)であることに由来します。AMMとは価格をそのときの需要から数式で決定する販売所のようなモデルです。

中央集権取引所のマーケットメイキングでは板にオーダーを出すことで行われますが、AMMへの流動性提供はスマートコントラクトに資産をロックアップして取引可能な状態にすることを指します。つまるところ、流動性提供とは特定の分散型取引所スマートコントラクトに資産をロックアップして、そのスマートコントラクト内の取引を活発化させることを指し示しています。

実際にUniswapで流動性を提供する方法

実際に流動性提供するケースを見てみましょう。ここではユニスワップ(Uniswap)におけるETHDAIの流動性プールに流動性を提供していると考えましょう。ユーザーは、ETH価格が上昇している局面ではETHを購入し、下落局面ではETHを売却します。

厳密には、Uniswapの場合、市場価格は数式によって決定するので、購入することで価格が上昇し、売却することで価格が下落します。ユーザーが買いたいときに売り、売りたいときに買うのが流動性プールの役割です。つまり流動性提供者の資産は下記のように取引されます。

  • ETH価格が上昇するときは、売り上がる
  • ETH価格が下落するときは、買い下がる

これは一見損な立ち回りに見えます。なぜなら、下落局面においてはETHの数を増やさないほうが良く、上昇局面においてはETHの数を減らさないほうが良いからです。流動性提供者はこの逆を行っています。

つまり、市場価格が単調増加・単調下落するときには、流動性提供は合理的ではありません。市場価格が上下することを前提として、プール回転率×0.3%の手数料収入を狙うのが流動性提供者が得られる利益です。つまりレンジ相場ではよく機能します。どの流動性プールの利回りが良いかはこちらの「Pools」というページで確認できます。

上記は比較的簡単なケースですが、これがDeFiにおける流動性提供です。知っておくだけであれば上記の内容で十分ですが、さらに腹落ちさせるには実際に使用してみることが近道かも知れません。

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